「女性のポジティブな登用は、果たして日本の企業組織にとって有効なのか。」このリサーチクエスチョンをもとに、女性を意図的に管理職に登用し組織効率を上げている、日本企業では稀な成功事例、イオン株式会社を調査対象としてとりあげた。 同社が、他の日本企業と異なっている点は次の4つである。1つは、数値目標を設定し、ポジティブかつシステマティックに女性を登用しようとしている点である。男性に対する逆差別になるとのことから、クオータ制を採用する日本企業は、現在のところ皆無である。2つは、日本企業の一番のネックであり、影響力が大きい、人をマネジする店長に女性を登用した点である。3つは、男性のキャリアとして一般的なポストに女性を意識的に配属している点である。商品部や食品売場などこれまで男性の多かった部門への積極的に女性をつけていくことで、組織全体を変えていこうとしている。4つは、これまでであれば実績のある男性店長が配属されたであろう既存の大型店(年商90億、従業員数530名)で、女性店長が経営成果をあげている点である。 調査方法としては、個別ヒアリングを実施した。人事担当役員を含む人事担当者5名、加えて意図的に登用された女性管理職5名を取り巻く人々、過去の上司・現在の上司・同僚・部下(マネジャー・主任・担当・パートタイマー)45名に360度のヒアリングを行い、2001年度の対象者は合計55名となった。さらに比較対象のため、ポジティブアクション的に女性を登用するのではなく、あくまでも個別管理をめざすNTT西日本株式会社の女性管理者3名および人事担当者1名にもヒアリングを実施した。 研究成果は、(1)「ジェンダーマネジメント(東洋経済新報社2001年)」に掲載、(2)2001年8月アカデミーオブマネジメント年次大会のジェンダーダイバシティセッションにて発表、(3)2001年11月経営行動科学学会第4回大会にて研究発表、(4)ILOから2002年に出版されるImproving Enterprise Productivity and Competitiveness through Nondiscriminatory Employment Practices (Susan E..Jackson and Randall S.Schuler eds.)に掲載予定である。
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