ベンチャー・キャピタルは、ハンズオン投資によって投資先企業に価値を付与し、急成長企業を輩出する役割を果たすものとして高い期待が寄せられている。海外の先行研究においては、VC投資先企業が、高い業績パフォーマンスを達成していることなどが実証的に明らかにされている。本研究では、こうした状況がわが国のVC投資先企業に関しても同様にみられるのかどうかについて分析を行った。新規株式公開の前後で株式保有構造は大きく変化し、とりわけわが国VCの多くは持ち分の大半を新規公開時もしくは公開後短期間のうちに売却している(ただ、最近ではロックアップ契約を結ぶことによって、こうした行動を規制するようになっている)。新規公開前後のVCの保有比率と業績パフォーマンスとの関連性について分析を行った結果、公開後のVCによる株式保有の水準が経常利益対売上高比および当期純利益対売上高比と正の相関をもつことが示された。ただ、公開前の業績パフォーマンスを高めているとの結果は得られなかった。このほか、企業規模や企業年齢と業績パフォーマンスとの間に負の相関があることが明らかになった。本研究の分析結果は、公開前および公開後における業績パフォーマンスの悪さが、大規模で成熟した企業と密接に関連していることを示唆するものであった。こうした分析結果を受けて、1995-97年の新規開業企業を対象に2002年1月に実態調査を実施した(有効回答企業は1042社)。わが国の新規開業企業について見れば、VCから出資を受けている企業は少なく、わずか7%にすぎなかった。VCについては資金供給だけの役割だけでなく、人材供給などの資金供給以外の役割が求められているが、人材を受け入れている企業は全体のわずか1%にすぎない。わが国のVCは、資金および人材供給などの点から新規開業企業に対する支援者としての役割を十分にはたしているとは言いがたい。
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