昨年度までにおこなった複線型雇用管理下のホワイトカラー従業員に対する質問紙調査および非コア従業員に対するインタビューのデータの分析をおこない、複線型雇用管理下のコア従業員と非コア従業員のあいだでの技能と処遇に対する評価について比較した。具体的には、コース別雇用管理下の一般職と総合職・コースなし採用者について、技能形成の特徴と、処遇の全般的な公正性を比較した。非コア従業員(一般職)は「所属する職場において人手が足りないときに臨機応変にカバーする」という職場の仕事を滞りなく進める上で重要な役割を果たしているが、一方、処遇については、全般的な公正性および中立性について、非コア従業員(一般職)のほうがコア従業員(総合職)にくらべて低く評価していた。これらの結果をもとに、社会心理学における「社会的アイデンティティ理論」にもとづき、複線型別雇用管理下の非コア従業員が処遇の比較対象となるグループを選択するメカニズムについて仮説的なモデルを作成した。非コア従業員がとる戦略には社会的創造性と社会的競争の2つがあり、どちらを選択するかによって「個別的行動サブグループ」と「普遍的行動サブグループ」の2つのサブグループに分かれていると考えられる。また、複線型別雇用管理下の職場での社会的勢力関係を維持しているコミュニケーション構造について検討し、今後の企業における非コア従業員の雇用管理について提言をおこなった。
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