本研究の目的は、買収企業と非買収企業の事業の相似性、組織特性、マクロ要因が合併、買収、統合の組織再構築モードの選択に与える影響を明らかにすることである。具体的には、事業の相似性や技術特性、企業規模、過去の資本・取引・提携関係、政治リスクなどの諸要因が組織再構築モードの選択に与える影響について、統計学的手法を用いて実証研究する。本研究で予想される結果は、買収後の組織再構築モードは上述の要因にシステマティックに影響され、それぞれは限定的、特定の状況のもとで行なわれる傾向があるというものである。平成13年度の研究実績は下記の通りである。 1.経済学、組織理論、戦略論関係の先行研究をもとに、実証検証可能な仮説を構築した。 2.平成12年と平成13年に日本企業が関与した企業合併・買収事例のリストを作成し、本研究の初期サンプルを構築した。 3.構築した仮説をもとに企業向けサーベイを作成し、初期サンプル中の企業に郵送した。 4.収集した回答済みサーベイ・データの予備解析では、買収企業と非買収企業の事業相似性が高くなるに伴い、買収後の統合度が高くなるという仮説を概ね支持する結果が得られた。より精緻な検証結果が得られ次第、他の検証結果と合わせて学会および論文発表する予定である。 5.データの予備解析の過程で得た戦略的含意をもとに、政治リスクと契約リスクが海外直接投資の参入モードに与える影響について理論モデルを構築し、『The Waseda Commercial Review』誌に論文発表した。
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