今回の研究については、前年度と同様に特に現地調査および現地での資料収集を行い、そしてこれらのデータをもとに東北国有企業から改組された上場企業の実態とそのガバナンスの問題を明らかにした。この研究成果(「中国東北上場企業のコーポレート・ガバナンス」)の概略については以下の通りである。 戦後、中国の東北地方は重工業基地として計画経済の徹底的な実行を通して国家財政および経済発展に重要な役割を果たしてきた反面、企業経営のメカニズム転換の遅れや経営効率の低下など様々な問題を抱えている。中国政府は、これらの問題を解決するために積極的に株式市場を活用して国有企業の民営化を推進してきた。しかし、東北地方において国家株を代表する官僚や党委員会のトップは多くの上場企業の会長と社長を兼任しているため、企業は上場を果たしたにもかかわらず、依然として国有企業の体質が色濃く残っている。現時点で経営責任者に対する党委員会の内部監督は最も有効な手段になるかもしれない。しかし、東北上場企業の場合において多くの最高経営責任者は現職の党書記や官僚、あるいはそれの経験者であるため、党委員会による乱脈経営の抑制効果はかなり低下してしまう。つまり、上場企業においては党幹部や政府官僚による経営者の兼任をできるだけ回避し、積極的に専門経営者を導入する必要がある。さらに、それらの経営者に大きな影響力を有する大株主である企業集団の親会社および行政機関は外部から積極的に経営者を監督する必要がある。したがって、東北上場企業に有効なガバナンス・システムを構築するためには、内部では党委員会の役割を明確にし、外部では国家株を代表する国有資産管理部門の責任者に積極的に上場企業を監督する有効なインセンティブを提供するか、あるいは国家株を徐々に監督するインセンティブを有する法人株主に移譲する必要がある。
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