研究概要 |
13年度においては,まず,税効果会計に係る先行実証研究の考察を行った。そして,税効果会計情報の企業価値関連性に関する実証研究とともに,税効果会計の適用時期の選択および繰延税金資産の評価における裁量に係る実証研究という類型化を行い,考察した。また,関連する領域として会計方針の選択に関する理論,利益調整という観点からの先行実証研究をレビューした。 これらを踏まえて,『税効果会計に係る会計基準』の設定において早期適用が容認された点から,まず,わが国の一般事業会社の適用動向を調査した。ここでは,連結財務諸表および個別財務諸表における適用動向を調査した。そして,この適用動向はどのように説明されうるのか,すなわち,『税効果会計に係る会計基準』に係る経営者の適用時期の選択に関する仮説の提示に取り組んでいる。 上記に並行して,繰延税金資産が,商法上,配当可能利益の計算に含められる点を勘案し,個別財務諸表における繰延税金資産計上額に関するデータを収集,整理した。すなわち,投資情報としては連結財務諸表が主たる財務諸表であるが,契約関係は個別企業が単位とされ,その関係の中で利用される財務情報としては個別財務諸表が重要であると思われるからである。 そして,個別財務諸表において『税効果会計に係る会計基準』を早期適用した企業を対象に,適用の効果を調査し,これを発表可能な形にまとめた。 さらに,経営者の裁量的行動という観点から,適用動向と経営者による繰延税金資産の評価に関するリサーチ・デザインを検討するとともに,これらを包摂するリサーチ・デザインのあり方を検討している。
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