研究概要 |
平成13年度は、Ohlson[1995],Feltham and Ohlson[1995],Ohlson[2000]で紹介された企業評価モデルに関する先行研究をサーベイし、これらのモデルが抱える問題点を明らかにするとともに、今後、モデルが現実の資本市場をどの程度説明しているのか、さらには、モデルの説明力を改善するためにはどのような改良をすればよいのかについて検証するための準備としてまだ不備は残るが必要なデータを収集した。 先行研究のサーベイによって特に明らかになったのは、モデルのパラメータの一つである割引率(資本コスト)の採用に関する問題である。具体的には、(1)先行研究の多くはデータコストの節減を根拠として、割引率(資本コスト)に全企業全年度一律にリスクフリー利子率(例えば長期国債の利回り)を採用しているが、割引率(資本コスト)は各企業各年度で現実には異なり、これらを一つ一つ算定して与えることによってモデルの企業価値説明力が改善する可能性があるという点、(2)割引率(資本コスト)算定の手法はファイナンス分野で確立しているものだけでも数多く存在するが、企業価値説明力が最大限改善するようなものはどれなのかという点、(3)各企業各年度について算定した割引率(資本コスト)を採用することによってモデルの企業価値説明力改善のメリットが見られる場合に、リスクフリー利子率を採用することによってデータコストを節減するメリットとどれほどのトレードオフ関係があるのかという点、(4)現実の資本市場を説明する上で理論的妥当性があるのはどれなのかという点の以上4点である。 今後はデータを完備し、上記の問題4点を中心に検証するとともに、情報価値関連性やその他の付随的な問題についても言及していく予定である。
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