研究概要 |
本年度は,主として,スループット会計が戦略的コストマネジメントのツールとしてどのような機能を発揮するかを制約管理のプロセス,すなわちボトルネック管理に焦点を当てて検討し,TOCにリンクするスループット会計の利益管理システムとしての意義を明らかにしようとした。 TOCにリンクするスループット会計は,現在,戦略的管理会計に関する文献等において認知されるようになった。このことは,当該会計が提唱された当初よりも一般的な位置づけを獲得し,戦略的ツールとしての有効性を期待されるようになったことを意味している。しかし,スループット会計それ自体は,直接原価計算の一つのバリュエーションとして捉えられる傾向があることも否定できず,そのような理解に基づく限り,伝統的原価計算とは異なる新しい考え方を有する会計であることを論証することは難しい。 そこで,本研究では,TOCにリンクするスループット会計と伝統的原価計算との相違点を明らかにするために,あえて伝統的原価計算の枠組みの中で当該会計のプロセスを説明し,そこで把握される在庫の概念が新たな解釈に基づいていることを指摘した。これらの検討を通じて,TOCにリンクするスループット会計の目指す在庫管理ひいては利益管理の意義を明らかにするという目的は概ね達成されたと思われる。 以上については,平成13年9月22日に大阪学院大学で開催された日本会計研究学会・第60回全国大会の自由論題報告において「制約理論(TOC)における制約管理のプロセスとスループット会計」として発表した。次年度はこれを敷衍し,サプライチェーン管理におけるTOCの戦略的位置づけ等を明らかにしながら,TOCにリンクするスループット会計を中心とする戦略的コストマネジメント・モデルを提示したいと考えている。
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