研究概要 |
保型形式からL関数を構成するには,それらをフーリエ展開しそのフーリエ係数から生成関数をつくるのが基本的である.しかしながら一般には正則保型形式以外ではフーリエ展開の実質的理論は存在しない.そういった理由から正則でない多変数保型形式とそのL関数については今まであまり研究されてこなかったが,非正則保型形式のフーリエ展開を研究する為に必要な主系列表現の一般化Whittaker関数について研究した.この表現に対する一般化Whittaker関数は既に扱ったことのある離散系列表現に比べてかなり複雑になることが予想されていた. 具体的には,階数2の特殊ユニタリ群SU(2,2)の主系列表現にたいして,対応するエルミート保型形式のジーゲル放物型部分群に関するフーリエ展開にあらわれる一般化Whittaker関数について研究した.まず,一般化Whittaker関数の2変数の特殊関数としての満たすべき偏微分方程式系を得た.ただし,この微分方程式系は階数8になり扱いにくい.(離散系列表現のときの偏微分方程式系の階数は4以下であった)次に,ある特異因子に沿った正則解の境界値の満たすべき4階の常微分方程式を得て,解空間を調べた.結果として,一般化Whittaker関数の境界値関数はメージャーのG-関数であらわされることがわかり,絡空間の重複度1定理を得た.得られた結果の応用として,境界値関数のメージャーのG-関数による明示公式を用いて,一般化Whittaker関数のメリン変換を計算することが可能となり,対応するアンドリアノフ-菅野L関数のガンマ因子を得た.
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