研究概要 |
B. Sturmfelsの問題「normal toric idealは、Cohen-Macaulay(以下、CM)なinitial idealを持つか?」に対し、simplicialな場合に、肯定的な解答を与える事が出来た。詳しく言うと、最近、S. HostenとR. Thomasは、整数計画法的手法を駆使して、simplicialなnormal toric idealは、埋込素因子の無いinitial idealを持つことを示したのだが、私は、このイデアルが、常にCMであることを証明した。一般に、「埋込素因子を持たない」と言う条件は、「CM性」よりも遥かに弱く、normal toric idealのinitial idealに限っても、前者は後者を導かない。「simplicialな」と言う仮定を追加しても状況は変わらないと思われるが、Hosten-Thomasのイデアルは、ちゃんとCMなのである。なお、「simplicial」は、強い条件なので、より一般の場合が今後の課題と言える(実際、Hosten-Thomasの結果は、もう少し広いクラスをカバーしている)。 その他の話題としては、E. C. Zeemanが1960年代前半に(複数のホモロジー理論の間の関係を見る目的で)導入した二重複体と、normal toric ring上のsquarefree moduleとの関連が有る。これは最初、E. Millerによって指摘されたが、その後、本研究課題のテーマの一つである反変関手Ext^i_R(-,ω_R)との密接な関連も明らかとなり、現在、Millerとの共同研究が進展中である。また、宮地淳一氏やR. Martinez Villaとのディスカッションを通して、本研究課題と多元環論の話題(例えば、非可換双対化複体、Auslander reguler ring)との繋がりも色々見えてきたので、来年度は、この方向をさらに押し進めたい。
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