研究概要 |
d-complete posetは,1999年にR.A.Proctorによって導入されたposetで,shape(ヤング図形と1対1に対応しているposet)を含む15種類のposetの結合といった形で完全に分類されている.また,d-complete posetの線形拡張の個数はhook lengthを用いて表されるといったことも知られている.ヤング図形に関しては,これまでに組合せ論的及び表現論的に非常に重要な結果が多数報告されている.本研究では,ヤング図形に関連した様々な組合せ論的対象のd-complete posetへの拡張概念の構築及びd-complete posetに関連した表現論の考察といったことを目的とし,本年度は具体的に以下の結果が得られた. 1.Pが特別なBird (d-complete posetの1種)のときには,edge labeling Rをうまく定義すれば,(P,R)-partitionの母関数がsemi-standard tableauの母関数と同様の形になることを証明した.この結果は昨年度示したtreeに対する結果の延長として位置づけられる.一般のd-complete posetに対しては現在考察中である. 2.d-complete posetのq-hook length formulaは,代数幾何学の手法を用いて証明されたといわれている.この問題は組合せ論の言葉を用いて完全に表現できるので,組合せ論の手法だけを用いても証明できるはずだと考え,鳥取大学の石川雅雄先生と共同でその証明に着手した.その結果,15種類の中の11種類のd-complete posetに対するq-hook length formulaの組合せ論的証明に成功し,その系として,これまでに知られていなかった複雑な対称関数が多数発見された. 3.tree, shapeに対するq-hook length formulaの多変数化を行った.この系として,hook length posetを大量に構成するアルゴリズムが見つかった.
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