1970年代にGreenberg予想「総実代数体の円分Z_p-拡大に対して、イデアル類群のp-部分は有界であろう」という強い予想が提出された。1995年頃、筆者は市村氏(横浜市立大)と共に、実円分体に対して円単数と素数を用いて、この予想に対する個々の効果的な判定法を与えた。 本研究では、ある単純な条件の下で、更に上記の判定法で用いた素数のGauss和と新たな素数を用いて、p-類群の位数を整数計算のみを用いて効果的に調べられる判定法を得ている。これは円分体のp-類群の位数を計算するというだけでなく、円単数とGauss和の間の重要な関係を表している。判定法は、円単数、Gauss和の元に対してp-進L関数の零点から求められるガロア群の元を作用させ、さらにそれらを有限体に写像したものが1であるかどうかというものである。ここで注目するのは、どの元も明確に与えられた元であり、この予想が判定法を満たす2つの素数の組の存在に帰着されるということである。 また、この判定法を用いることによって、実イデアル類群が非自明かつp-進L関数の零点が2つ以上の場合においても、有限の差を無視しない無限位数の岩澤加群の構造を具体的に決定できる。零点が3個のときにはこれまで岩澤加群の完全な分類ができていなかったが、特殊な条件の下で新たに岩澤加群の同型類をいくつか決定できた。これによって、岩澤加群がself adjointでない興味深い実例を挙げることが現実に可能になったものと考えられる。
|