研究概要 |
chiral de Rham複体などを使って鏡映対称性の証明を行なうことが当初の目標であったが、より広く、数え上げや場の理論的な数学に関する研究を行なった。 1.相対Gromov-Witten不変量と局所Gromov-Witten不変量の一致に関する結果(前年度の研究の続き)。 射影平面P^2内の直線または非特異二次曲線Bに対して、(P^2,B)の相対Gromov-Witten不変量のうちBとの交わりがκ点である有理曲線に対応するものとL(-B)の同変局所Gromov-Witten不変量が符号を除いて一致することを証明した。 これは弦理論に市ける様々な双対性の内でも数学的に取いやすいものと考えられるが、より幾何学的な証明、あるいは意義についてはさらなる研究の余地がある。 2.多角形の貼り合わせにより得られる曲線の分布。 今年度の計画でchiral de Rham複体に注目したのは、場の理論を代数的にとらえることが目的であった。一方、場の理論の数学的理解の別の例として、多角形の貼り合わせによってリーマン面を代表させる考え方がある(これは数論におけるdessins d'enfantsとほぼ同じものである)。 そこで今回、一つの正多角形の辺を貼り合わせて作られる種数1のリーマン面を考え、そのモジュラス(τおよびj不変量)の分布について計算機による数値実験を行なった。またいくつかの系統的な例についで厳密な計算を行なった。これらの実験の結果として、このようにして得られるγ不変量の実部の絶対値は1未満なのではないか、という仮説を現在のところ立てている。
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