研究概要 |
今年度は、次数2の実シンプレクティック群G=Sp(2,R)の極小放物部分群から誘導された主系列表現に対するフーリエ・ヤコビ型球関数に対する研究を行った。 既約許容表現の一般論から、フーリエ・ヤコビ型球関数に対するGのリー環の包絡環の中心の元の微分作用はスカラーであることは容易にわかる。しかしながらこの作用は複雑であり明示的に書き下すのに適当とは言えない。本研究では上記の作用素にかわって、球関数の空間上に作用するシュミット作用素と呼ばれる1階の微分作用素の幾つかの合成によってフーリエ・ヤコビ型球関数に対するスカラー作用素を構成した。また、これを明示的に書き下し、フーリエ・ヤコビ型球関数が必要条件として満たしている合流型4階微分方程式を具体的に構成した。さらに、この微分方程式の解空間を決定し、フーリエ・ヤコビ型球関数のメイジャーのG-関数による表示を得た。特に、動径成分上緩増大である球関数に対する重複度1定理を示した。 この結果から、ヤコビ放物部分群から誘導された主系列表現に対するフーリエ・ヤコビ型球関数は、対応する表現の埋め込みから得られるものとそうでないものとに分類されることが観察された。埋め込みから得られないものは古典的なSL(2,R)上の保型形式および正則ヤコビ形式に対応する表現の場合であり、重要であると思われる。一方、埋め込みから得られるものは非正則保型形式に対応する表現の場合であり、非正則保型形式の間の対応はさらなる研究が必要である。
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