研究概要 |
リーマン面から複素2次元平面C^2内への総実はめ込みは,そのKaehler角度関数α(O<α<π)とLagrangian角度関数β(の導関数)を係数とするある1階線形偏微分方程式系(ディラック型方程式)の解とみなせる(場合がある)ことを導き,α,βとその方程式の解を与えたときに総実曲面を構成する表現公式を与えた.中でも特に興味深いのは,Lagrangian曲面(Kaehler角度α=π/2)の場合である.極小曲面である(C^2内の)Lagrangian曲面はC^2への正則写像(Cauchy-Riemann方程式の解)とみなせることはよく知られていたが,この表現公式を与えているDirac型方程式はCauchy-Riemann方程式の拡張系ととらえられるのである. 論文'Totally real surfaces in the complex 2-space'では,C^2内の総実曲面に対するその表現公式を与え,さらに曲面のガウス曲率・平均曲率等を計算した結果を発表した.また,論文'Lagrangian surfaces in the complex 2-space'では,特にLagrangian曲面の場合に限ってその表現公式をまとめた.プレプリント'Lagrangian surfaces with circle symmetry in the complex two-space'では,その表現公式のスピン解析的視点からの意味付けを明確にした上で,それを用いて,与えられた1変数関数β(s):I→RをLagarangian角度としてもつI×S^1からC^2へのLagrangianはめ込みf(s,t)を具体的に構成する方法を与えた.ここで構成したLagrangian曲面は3次元Euclid空間内の螺旋曲面および平面内の曲線と興味深い対応関係をもっており,実際,その関係に着目して,Lagrangian曲面を構成することができたのである. このプレプリントでは,さらに,そのように構成されるLagrangian曲面が,微分幾何的によい曲率条件をもつ場合(共形的Maslov形式をもつ場合・ハミルトン極小な場合・平坦である場合)に,曲面の分類を考察した.
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