研究概要 |
結び目・絡み目の局所変形にC_k-moveと呼ばれるものがある.これは葉広氏により定義されたもので,同氏は数年前に次の驚くべき結果「2つの結び目の位数k-1のVassiliev不変量が等しい為の必要十分条件は,それらがC_k-moveで移り合うことである.」を示した. 結び目の集合をC_k-moveで割った同値類(これをC_k同値類と呼ぶ)は,結び目の連結和という操作の下で可換群になる.これは葉広氏の結果の証明のキーポイントである. 結び目理論で良く扱われる空間グラフの1つに,空間θ曲線と呼ばれるものがある.空間θ曲線に対してもC_k-moveが定義できるのであるが,最近の私の研究により,空間θ曲線のC_k同値類が頂点連結和と呼ばれる操作の下で群構造をもつ事がわかり,位数kの低いところでは,葉広氏の定理と同様な結果が得られることがわかった. 結び目のC_k同値類のなす群と空間θ曲線のC_k同値類のなす群の大きな違いは,結び目の方は可換群になるのが明らかなのに対し,空間θ曲線の方は位数kが大きくなると可換か否かの判定が困難になる事が挙げられる.平成13年度の研究成果として次が得られた. [定理]空間θ曲線のC_k同値類のなす群が可換であれば,2つの空間θ曲線の位数k-1のVassiliev不変量が等しい為の必要十分条件は,それらがC_k-moveで移り合うことである. 従って,空間θ曲線のC_k同値類のなす群が可換か否かを調べることが重要な課題であった.これに対し,平成14年度の成果として次が得られた. [定理]空間θ曲線のC_k同値類のなす群は,k【less than or equal】4ならば可換であり,k【greater than or equal】12ならば非可換である.
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