本研究では、特異点集合Σが単純閉曲線S^1と同相となる成分のみをもつ、3次元双曲錐多様体Mの変形を解析することを目的としている。特に錐角αを微小に変えるようなMの微小変形を具体的に記述することをめざしている。そこで、そのようなMの微小変形を記述する際に鍵となる特異点集合の近傍における調和ベクトル場の具体的記述が求められる。今年度の研究では、錐角αが無限大に発散する場合の調和ベクトル場の退化の様子を詳しく解析し、退化した場合の調和ベクトル場のGaussの超幾何函数による表示を得ることができた。また、錐角αが0に収束する場合に、調和ベクトル場の方程式に対応するFuchs型の常微分方程式の解析をすることによって、双曲錐多様体からカスプをもつ多様体をつくり出すという操作がFuchs型の常微分方程式の確定特異点の合流操作と相当するという事実も発見した。 また、このような調和ベクトル場のGaussの超幾何函数による表示は、ある6階の常微分方程式の微分作用素をRiemannのP-微分方程式の微分作用素を用いて表わすことによって得られる。この方法を一般の3点0、1、∞を確定特異点とするFuchs型の高階の常微分方程式にも適用できるように開発した。その解法のアルゴリズムは学術雑誌に掲載されることに決まった。
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