研究計画調書および交付申請書に述べた研究目的 1.シンプレクティック商の各種不変量の解析 2.ラグランジュ部分多様体の交叉理論における代数的構造の考察 に関して、得られた結果・進展について報告する。 目的1については、コンパクト・リー群の余随伴軌道たちの直積からシンプレクティック商として得られる空間に対する特性数の挙動について、かなりの進展が得られた。すなわち、2次元特殊ユニタリ群の場合の諸結果(体積および同変指数の公式等)を、部分的にではあるが3次元の場合に拡張することができた。現時点ではまだ過渡的な形ではあるが、その結果はさらなる一般化を予期させるものであり、今後の課題を豊富に提供している。例えば今年度得られた結果を、一般次元の特殊ユニタリ群の場合に拡張することは興味深い問題である。 また同時に、同変指数と体積の公式についての2つの表示(一方はシューア多項式の積に対してワイルの積分公式を適用して得られるもの、他方は、アフィン・リー環に対するフェアリンデの公式から得られるもの)の対応を、代数的立場および幾何的立場の両方から明確にできたことも、重要な成果であった。 目的2については、ホモロジカル・ミラー対称性の具体例を主として研究した。そして少なくとも実4次元の場合には、ミラー多様体の構成の逆対応が、シンプレクテイック・トーラスの退化に関する本研究代表者の以前の結果と密接に関連することが判明した。目下この関連をより明確にする作業を進めており、応用等については次年度の課題とする。
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