研究概要 |
今年度は確率過程のwavelet解析に関する基礎付けにということに関し、確率過程の汎関数の極限分布の解析の観点から研究を行ったWavelet係数の一般的な特徴として非ランダムな関数解析で知られている元のBesov関数とWavelet係数の間に成り立つノルム同値性を,確率過程に対してはどのように定式化するかということが当該分野では数年来一つの論点となっている。これまでの欧米の確率統計の観点からの研究では、wavlet関数族をkernelとするkernel法により過程の極限分布を推定するという問題における定式化が一つの考え方のようにみなされてきた感があった。この欧米の研究では過程のサンプルパスに対しwevelet変換を取らず、サンプル数を無限大にとるlarge sample極限の議論がなされたいるが、そこには何かしっくりこない気持ち悪さもあった。 この疑問に対し私は、本年度の研究により次のような解答を得た。すなわち、過程ドメインで過程のある汎関数の極限分布を調べたいときに、サンプルパスのwavelet係数に対する汎関数を取り、その汎関数の確率ノルムに対して上記のようなノルム同値性が成り立っということである。そこではノルム同値性の意義も明らかとなり、過程ドメインでの推定量の収束の評価が対応するwavelet係数ドメインでの収束の評価で上下からなされるということになる。従って、元の過程ドメインでは長期記憶性を持つあるいは非中心極限定理しか得ることのできないような状況でも対応するwavelet係数ドメインにおいてwavelet係数の時間-周波数局在性の特長を利用し対角成分のみの評価により中心極限定理での収束評価ができることになる。このことは現在、自己相似過程、定常過程、一般の過程クラスに対しそれぞれ成果としてまとめているところであり、近々公表できるものと考えている。
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