研究概要 |
一般に異なる媒質間の境界面が存在するとき、その位置や形状の時間変化を調べる問題を「自由境界問題」という。自由境界がその周囲の影響を受けず、境界の形状によって自律的に運動する場合、その運動を「曲率運動」、「界面運動」と呼ぶ。平成13年度では以下の3つの事項について研究が発展した。 (1)クリスタライン・アルゴリズム:界面運動の近似解法の一種である。本年度は非局所項を持つ曲率流方程式に従って変形運動する平面曲線の近似スキームとしてクリスタライン・アルゴリズムを適用し、スキームの安定性、及び収束性についての理論的解析を行ない新たな知見を得た。 (2)クリスタライン運動:結晶成長モデルとして提案された界面運動の一種。折れ線Pの各辺の法線速度Vが非局所的曲率(クリスタライン曲率と呼ばれる。仮にKとかく)に依存してPが時々刻々と変形する運動である。一般的なモデル方程式は、ある関数Fを用いてV=F(K)と与えられる。結晶成長のモデルとしては、FはKの線形方程式として定式化される。本申請研究では、より一般の、しかし特徴的な関数Fについて調べることが目的であった。当該年度では、Fが線形の場合、正冪に比例する場合、負冪に比例する場合の3種について研究し、解の漸近挙動、及び極限形について興味深い結果を得ることができた。 (3)面積保存クリスタライン運動:(2)で考察した運動は局所的情報に依存するものであったが、より一般には非局所的情報に依存する場合も考えられている。方程式はV=F(K, L)という形で与えられる。Lは非局所的情報で、場合によっては運動がある種の保存量を保存する系となる。当該年度では、面積を保存するクリスタライン運動の解の漸近挙動について調べ、ほぼ決定的な結果を証明することに成功した。
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