熱対流現象におけるロールパターン、生物の形態形成における縞模様など、自然界には空間的な周期構造をもつパターンが多く見られる。このような周期構造が形成されるとき、どのような周期のパターンが選択されるのかという問題は、多くの研究者によって考察され続けている。このようなパターン選択問題を解明するための第一歩として、生物の形態形成モデルの1つであるActivator-Inhibitor系の超微速運動や、熱対流現象におけるSwift-Hohenberg方程式に現れるロール解の安定性について研究を行ってきた。本年度は、東北大学の柳田英二氏との共同研究により得られた、勾配・歪勾配系における空間的周期パターンのEckhaus不安定性を判定する極めて一般的な公式(SIAM Journal on Mathematical Analysisに投稿中)をもとに、勾配・歪勾配系における空間的周期パターンのZigzag不安定性と、勾配・歪勾配系における自由エネルギー・歪自由エネルギーの関係を定式化することができた。この結果は、パターン選択の問題において、FitzHugh-Nagumo方程式系のように勾配構造がないものであっても、歪自由エネルギーという自由エネルギーを拡張した概念を利用できることを示している。現在、この結果を論文として投稿する準備をしている。次年度では、この結果と臨界安定性仮説の関係を調べたいと思う。また、非線形微分方程式の解のダイナミクスを解析する方法として近年注目されているくりこみ群の方法について、簡単な常微分方程式を例にとり、その数学的な構造を説明することができた(研究発表の欄の雑誌論文)
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