東北大学理学研究科の柳田英二教授と勾配・歪勾配系構造を持つ散逸系における空間的周期構造をもつ定常パターンの安定性解析について共同研究を行った。その結果、周期パターンの不安定性にはエックハウス不安定性とジグザグ不安定性の2通りのものがあることがわかった。また、エックハウス不安定性は、定常解のみたす方程式から得られる第1積分を空間周期で微分した導関数によって決定され、ジグザグ不安定性は、定常解に対して定義される正規化されたエネルギーを空間周期で微分した導関数によって決定されることを証明した。この結果を具体的な微分方程式、とくに、スウイフト・ホーヘンベルグ方程式、ギンツブルグ・ランダウ方程式、アクティベイタ・インヒビタ方程式に対して適用し、これらの方程式に見られる周期定常パターンの安定性を正確に決定した。この成果は、国際誌Physica D 175(2003)巻の185-195ページに掲載された。また、国内の研究集会(応用数学合同研究集会、2002年12月19日-12月21日、龍谷大学理工学部)でもこの成果を発表して公開した。 上記の柳田英二教授との共同研究をもとに、チューリングパターンとよばれる反応拡散方程式に見られる空間的な周期パターンの安定性および、そのパターン選択問題について研究を進めた。その結果、チューリングパターンを発生させるためには、2種類の反相互作用をもつものが必要であることを数学的に証明することに成功した。また、チューリングパターンがただ1つ選択される可能性があることを、エネルギー関数の極値がただ1つのパターンにおいてのみ実現されることによって数学的に証明した。この結果もPhysica Dに投稿して公開する予定である。
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