近年、価値観の多様化が進んだ今日の杜会の発展、および集合値解析学、非線形解析学、凸解析学等の発展に伴って、集合値最適化理論の再構築が求められている。特にこれまでの評価基準の見直しに関する研究により、ある種の集合値最適化問題は、ある線形空間での母適化問題として帰着されることが示されている。本研究の目的は、この問題が埋め込まれる線形空間を観察することで導かれる理論的な解析および応用的な解析を行なうことである。本年度は以下の研究を行った。 【具体例の観察】 新しく導入された評価基準により定義される問題の具体例について考察した。これは従来のものに比べて応用力に優れており、注目されている問題である。この問題が埋め込まれる空間の性質を観察し、これにより、以降の考察に関する足掛かりを得ることができた。 【基礎理論の確立】 埋め込みに密接に関連する集合値解析的ないくつかの概念を導入し、それらの性質について観察した。そしてこれらを元にしていくつかの定理を証明し、双対定理を始めとするいくつかの定理を証明した。 【実際問題への応用】 基礎的な理論の確立と並行して、実際問題への適用方法について考察した。特に解を探索するアルゴリズムとして、非拡大写像の不動点近似法について研究・考察した。 【研究会等における発表を通じた意見交換】 本年度の研究成果は、国際会議NACA2001、ICOTA2001をはじめとするいくつかの研究集会で発表し、国内外を問わず本研究に対する意見を広く求めることが出来た。同時にWWW、e-mailを通じて、多くの研究者との意見交換を行った。
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