研究概要 |
本年度は,本研究課題の目的の一つである自由表面を持つ流れ問題のプログラム開発の準備を行った. 1.有限要素法を用いた抗力・揚力のプログラムの作成と評価. 本研究課題の予備的成果として得られている,非定常ナヴィエストークス方程式に支配される流れ場に置かれた物体の抗力・揚力の有限要素法に基づくプログラムを作成した.作成したプログラムを用いた数値計算を行い,誤差解析など理論的成果が裏付けられること,および提案した計算手法が実用性を有することを確認した.これらの結果は,予備的成果の理論的な鍵である非線形項やエネルギー不等式の取り扱いを本研究課題に応用することが,実用上も有用である可能性を示唆している. 2.大規模問題の数値計算に対応したプログラム開発の準備. 近年の数値計算の需要の増大は,高精度化の要求から来る計算規模の増大といった新たな困難を引き起こしている.これに対し,計算の大規模化に対する設備的な対応として,本研究課題の援助により新しい計算機の導入を行い,1.で開発したプログラムが高速化されることを確認した.さらに,計算の大規模化に対するソフトウェア的な対応の準備として,構造解析においてその有用性が確かめられている階層型領域分割法が移流拡散問題,渦電流問題に対しても有用であることを確認した.この結果は,階層的なデータの取り扱いにより演算装置の利用効率の高い並列計算を可能とする階層型領域分割法が,問題によらない汎用性を持つ可能性を示唆している.従って,本研究課題で開発するプログラムの将来的な大規模問題への対応に対する知見を得ることができた.
|