研究概要 |
螺旋乾位による結晶成長の数理モデルとして提案された,2次元領域上の空間的に一様でない非線形性をもつ反応拡散方程式(以下,モデル方程式と呼ぶ)に現れる解の定性的性質を調べることが本研究の目的である.今年度は,モデル方程式や領域にさまざまな非一様性が入った場合についての研究を進めることにより,結晶構造に異方性がある場合や転位が複数箇所で起こった場合の結晶成長のメカニズムを調べた. 具体的には,以下の成果を得ることができた. 反応拡散方程式の拡散項や非線形項および領域の形状に非一様性を入れると,時間周期的に形を変えながら成長する解が存在することが数値シミュレーションにより示唆されるが,こうした解の存在や安定性などの定性的性質について無限次元力学系の理論を用いて解析を行った.とりわけ,モデル方程式を強順序保存力学系の枠組みでとらえ,時間周期的に形を変えながら成長していく解の存在,およびその解の(時間シフトを除いた)一意性,時間に関する単調性,リヤプノフの意味での安定性,(時間シフトを除いた)漸近安定性に関する一般論を構築した.ここで得られた一般論における結果は,今回扱ったモデル方程式に限らず,強最大値原理が成り立つ曲面の発展方程式など,より広範なクラスの方程式に適用することができる. 以上の結果はProceedings of The Second Conference on Nonlinear Analysis and Convex Analysisに掲載される予定である.
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