2次のWiener汎関数がその特性関数、すなわち、その汎関数を位相関数とする振動積分型の期待値を通して、汎関数の停留点である古典軌道と結びつき、自然な形でGrassmann多様体と対応することを示した。これによって、特性関数はこのGrassmann多様体上の力学系を定義する。この結果は下記の論文誌に投稿、掲載されている。また、ポルトガルのリスボン大学で行われた国際シンポジウム"The Mathematical Legacy of Feynman's Path Integral Approach"(2002年6月)に招待され、同内容の講演を行った。この結果より、Grassmann多様体の代数構造を通してソリトン理論との結びつきが示唆されるが、この関係は実際に、池田信行氏と谷口説男氏(九州大学)の最近の共同研究によって陽に与えられた。次の問題としては、3次以上の高次汎関数についての同様の研究が期待されるが、その手がかりとしてファインマン積分での対応物として、焦線近傍での近似によるグリーン関数の漸近展開の問題がある。これは理論物理学において与えられた結果であるが、この理論の確率解析の枠組みでの捉えなおしが必要であると考える。この背景と物理的な結果については、2002年11月に佐賀大学で開催されたシンポジウムで講演した。これはまだ研究の途上であるが、3次以上の汎関数を扱う場合には、特異点の問題やカタストロフィの理論が重要な働きをすることが、理論物理の結果から推察され、非常に興味深い現象が新たに現れると期待される。これからの課題として挑戦を続けて行きたいと考える。
|