本研究は、Schwarz超函数に対する緩増大関手を拡張し、Gevrey超函数に対しても同様の関手を構成する事を目標としている。極大過剰決定系において確定特異点型と不確定特異点型とではStokes現象等の新たな現象が起き様相が全く異なるように、本問題に於いても関手の構成法はかなり差異がある。本研究者は、本年度、この問題を既存のGevrey超函数の概念を拡張する事によって、実2次元以下の場合達成した。この拡張は、超函数の台が特異点を持たない場合は既存のGevrey級超函数と一致する。一方、超函数の台が特異点を持つ場合は既存のGevrey超函数とは一致せず、両者には本質的な差異が生ずる。これは、極大過剰決定系が不確定特異点を持つ場合、その解がStokes現象を持つ事と対応していると考えられ、実際の解の研究において重要な点となるだろうと予想している。他方3次元以上では、この拡張方法では不十分である様な特異な例が見つかった。この困難を解消し、一般次元についても関手を構成する事が次年度の目標である。現在の所、幾何的な情報もこめたある種のGevrey超函数係数の複体を直接derived categoryで考える事によって、解決できるであろうと考えている。この場合、subanalytic setsの射影写像に関するある種の性質の研究が重要な点である事も判っている。なお、実2次元以下の場合の構成法については、本年度いくつか発表を行った。また、論文を作成し投稿中である。
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