本研究はSchwartz超函数に対する緩増大関手を拡張しGevrey超函数に対しても同様のGevrey緩増大関手を構成する事を目的としている。Schwartz超函数に対する緩増大関手はM.Kashiwaraによって構成され、Riemann-Hilbert対応を具体的に与える関手となっている。このように、緩増大関手は確定特異点型の極大過剰決定系等の研究に於いて重要な道具となっている。一方、不確定特異点型の極大過剰決定系の研究に於いては、その解が指数的な発散を一般に伴うため、指数的な増大度を持つような緩増大関手の構成が望まれる。その構成は、Gevrey超函数の台の分解がSchwartz超函数の場合のように上手くいかず、本質的に困難な問題が存在する。本研究者はこの問題をGevrey超函数の概念を拡張する事によって解決する事を試みた。この拡張は対象となる超函数の台が特異点を持たない場合は既存のGevrey超函数に一致するようなものである。他方、超函数の台が特異点を持つ場合には、もはや既存の超函数には一致せず、一般にはより大きい空間となる。このような拡張されたGevrey超函数を用いることで、実2次元以下の場合はGevrey増大関手の構成に成功した。しかし、実3次元以上でこの拡張は、Gevrey超函数の台の分解に対して不十分である事を示す特異な例も見つかった。従って、より大きな拡張が必要になる。特異な例は、実3次元以上では拡張されたGevrey超函数の層のみならず、それをある意味含むような複体を直接考察する必要性を示唆していると考えられる。そこで、Gevrey超函数層を係数とするSubanalytic setsの複体を考察したが、まだ、最終的な構成までは至っていない。この問題を今後も考察し、最終的な構成に至る予定である。なお、実2次元以下の構成方法は論文を投稿中である。
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