研究概要 |
楕円関数で与えられる面型の相互作用を持つクラスの模型については、代数解析的な計算技術が一応の成熟を見たと考えられる。一方、楕円関数で与えられる頂点型相互作用を持つ模型に関しては、最も基本的な模型であるバクスターの8頂点模型に対してさえ、かなり長い間代数解析的な取り扱い方が見つからないでいた。完全な解答はまだ得られていないが、本研究において、バクスターの8頂点模型、即ち楕円量子群A_<q,p>(<sl>^^^^_2)に対する代数解析的手法をある程度まで進めることができた。まず、平成13年度には、変型ビラソロ代数の特別なパラメーターにおける表現論を用いて、パラメータがある特殊な関係をみたす場合(p=q^3)に、8頂点模型の一角を切り崩すことが出来た。平成14年度には、これがp=q^4及びp=q^6の場合に拡張された。p=q^4の場合には、二つの変型ビラソロ代数を張り合わせて構成出来ることが示された。p=q^6については、変型ビラソロ代数の対称性は見出せないが、自由ボゾンと自由フェルミオンを用いた表現が得られた。それらに基づいて相関関数の多重積分表示を導いた。最も簡単な1点関数の場合には、Baxter-Kellandの結果と合うことが確認された。 このように、バクスターの8頂点模型に対する代数解析的手法が、変型ビラソロ代数の表現論と密接に関係する(p=q^3,q^4)、一方、それを超えた理解が必要となる(p=q^4,q^6)ことが示された。8頂点模型持つの代数構造の全貌を解明することは今後の課題である。
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