以下、作用素とは、複素ヒルベルト空間上の有界線形作用素を表すものとする。 1. 可逆な正値作用素のカオス的順序に対応する2つの古田型作用素不等式について、パラメータの値を固定して考えると、可逆である場合2つは同値であり、可逆でない場合もほぼ同様の関係が成り立つことが知られている。本研究では、これらを一般化した不等式についても、同値であるか、またはほぼ同様の関係が成り立つことを示した。この結果の応用として、古田型不等式により定義される正値作用素の関係が持つある種の推移性について、従来の結果の精密化を得た。 2. 作用素の積の極分解は、それらが二重可換である場合は、既に定式化されていた。本研究では、一般の場合について、積の極分解の定式化を与えた。また、二重可換である場合の積の極分解の定式化が、二重可換であるための必要十分条件であることを示した。この結果の応用として、非正規作用素の研究において有効な道具であるアルスゲ変換について、その極分解を定式化した。 3. 2で挙げた結果を応用することにより、非正規作用素のクラスであるバイ正規作用素・センタード作用素の性質を調べた。具体的には、バイ正規作用素・センタード作用素のアルスゲ変換がまたバイ正規・センタードであるための同値条件、極分解やアルスゲ変換を用いたバイ正規作用素・センタード作用素の特徴付けを与えた。また、これらの結果に関連して考えられる予想について、その反例を与えた。
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