さまざまな自由境界間題や界面の発展方程式が反応拡散系の特異極限と見なせることが知られているが、本研究では「反応拡散系の特異極限として表すことができる間題はどれほどあるのか?」という問題意識で、反応拡散系全体の構造を特徴づけることを目指している。 本研究の出発点として本年は、界面などの特異性が現れないような方程式を反応拡散系の特異極限として表そうとして、準線形拡散方程式を線形拡散と適当な反応(相互作用)から成る反応拡散系の特異極限と見なすことを試みた。特に、生物個体群の空間的な移動を記述する個体群圧効果を考慮した非線形拡散のモデルとして知られる準線形拡散方程式に対して、そのダイナミクスを有界な範囲で近似する反応拡散系を構成し、3次元以下の空間領域では両者の解が空間的に一様に近似できることを証明した。ここでの核となるアイデアは、準線形拡散方程式の未知関数uの他に、密度依存型拡散の非線形性を反映した速いダイナミクスに従う新しい未知関数wを導入して、uに関する準線形拡散方程式をuとwに関する半線形拡散方程式系に書き直すことである。また、両方程式の解の誤差の時間発展を評価できるエネルキー関数を構成できたことが、証明成功の鍵である。 この結果を、平成13年12月に福岡で開催されたInternational Conference on Frontier of Applied Analysis-Fluid Dynamics and Pattern Formation-のポスター・セッションにて発表し、論文として現在まとめている最中である。
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