高階の非線形双曲型方程式に取り組む上で、第一ステップとなる非線形問題をモデル化した線形問題の大域解の存在に重点をおいて本年度は研究を行った。以下の順序に従って、本年度の研究を進めた。 (1)特性根の重根の個数(重複度)と関係する"方程式の階数"。 (2)特性根の重複のスピードに影響する"方程式の係数の滑らかさや形"。 (3)重複する特性根の形から制限される"方程式の低階の項の形"(レヴィ条件)。 1.まず、方程式の階数を2階に限定することで共同研究を行っているピサ大学のF.Colombini氏、トリエステ大学のD.Del Santo氏らと、(2)についての非常に詳しい研究を行った。そこでは、"方程式の係数の滑らかさ"とさらに"方程式の係数の形"として、端点において"激しく振動する係数"を考え、その解の存在を示すことに成功した。これにより、キルホッフ方程式等の一部の非線形問題に対して、解のライフスパンに関する考察が十分に可能となりました。 2.次に、(1)の"方程式の階数"を一般の高階にまで広げて、ローマ大学のP.D'Ancona氏と共同研究を行い、(3)の"方程式の低階の項の形"として最適な"レヴィ条件"を見つけだすことにも成功しました。ここで得られた結果は、"方程式の係数の滑らかさ"が、最も応用性の高いといえる実解析的なクラスに属する係数も含んでいるため、非線形問題だけでなく今後多いに役立つことが期待できます。また、来年度に第二ステップとして取り組む予定の非線形問題への応用を考慮して、振動する係数として有界変動関数まで扱うこともできるように、これまでの手法や線形問題の結果を大きく発展させました。
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