研究概要 |
従来の一次元複素力学系と、フラクタル幾何学の対象物である「自己相似集合」を生み出す反復写像系の両方の一般化として、リーマン球面上の有理関数で生成された、写像の合成を積とする半群の力学系を調べた。それに付随して、バンドル上の複素力学系の研究も行った。 バンドル上の複素力学系に関しては,ファイバーごとのジュリア集合が一様完全であること、さらにその一様完全性に現れる定数が底空間の点によらないことを示した。また、ファイバーに沿った半双曲性を仮定したときに、ファイバーごとのジュリア集合が疎性を持つことを示し、そこに現れる定数が底空間の点によらないことを示した。特に、ファイバーごとのジュリア集合のハウスドルフ次元が、底空間によらない2未満の定数で押さえられることが分かった。また、ファイバーごとの力学系が多項式の場合に、その無限遠点のファイバーごとの吸引域がジョン性を持つこと、さらにその定数が底空間の点によらずに取れることを示した。以上のことを示すには、いずれも、バンドル上の一次元複素力学系において(ファイバーに沿った)半双曲性を仮定したとき、ファイバーごとのジュリア集合が底空間の点について連続的であることを示したことが鍵となっている。 また有理半群の力学系について半双曲性を少し弱めた放物型固定点を許す条件と開集合条件のもとでジュリア集合が疎性を持ち特にそのハウスドルフ次元が2未満であることを示し、またその次元を臨界指数で上から押さえた。
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