流体中の渦の運動に関してオイラー方程式を調べることは、乱流現象の解明とも関連し、興味深い研究テーマの一つである。 アメリカのG.K.Vallisらは、人工的な項を加えた非定常オイラー方程式が、また、イギリスのH.K.Moffattは、完全電気伝導度と粘性をもつ非定常電磁流体の方程式系が時間無限大でオイラー方程式の定常解を生み出し、更に、その解は初期条件と同じ幾何学的構造をもつという主張をした。このアプローチは、従来2次元定常オイラー方程式の可解性の問題に関して用いられてきた変分法とは全く異なったものである。 もし彼らの理論が正しければ、複雑な渦線をもつ初期条件を与えることにより、定常オイラー方程式に対する複雑な渦をもつ解を得ることができ、乱流現象の解明に一つの方向性を与えることになる。しかし、彼らの理論を数学的に厳密に直接証明することは難しいように見える。 そこで、彼らのアイデアをガレルキン法と組み合わせ、2次元および3次元定常オイラー方程式に対する測度解の存在性を数学的に厳密に証明した。この証明法の特徴は、ガレルキン近似における基底関数の個数と時刻を同時に無限大にするところにある。オイラー方程式の測度解は、R.J.DiPernaにより非定常の場合に導入されたものだが、本研究で碍られたのは、その定常版である。
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