本研究課題の目的は、活動銀河核の電離ガス輝線領域について、その輝線の空間分布および速度分布を再現できる統一的的な電離輝線領域モデルの構築である。観測的に示唆されている、より内側の電離ガス雲による電離光子の遮蔽効果、衝撃波による電離、ダストによる減光などの全ての現象を考慮したモデルを目指している。 今年度は狭電離輝線領域モデルについて、電離度の高いイオンからの輝線が主に発せられる領域を説明できる二領域電離ガス輝線モデルの多領域拡張を行った。信頼性の高い汎用の電離ガスコード「CLOUDY」を利用した。様々な物理状態にある電離ガス雲からの輝線スペクトルを同時に計算し、局所最適化電離ガス雲モデルの手法を用いて電離ガス領域全体からの輝線スペクトルを合成した。既存の局所最適化電離ガス雲モデルと大きく変わらない計算結果を得ることができ、構築するモデルの中心となる局所最適化がうまくいっていることを確認することができた。さらに、内側のガス雲によって電離光子が吸収され外側の電離ガス雲が影響される効果を調べた。こちらは二領域モデルに組み入れる形で計算を開始したところであるが、今後多領域モデルに取り込み、より実際の電離ガス輝線領域を再現できるモデルヘと拡張させてゆく。 また・モデル計算と比較し得る高空間分解能、高波長分解能観測を平行して進めている。電離ガス雲を非常に高い波長分解能で速度構造として分解することが目的である。平成14年2月にハワイ・マウナケア山のすばる望遠鏡において高波長分解能分光器を用いてセイファート銀河の電離輝線領域の観測した。一晩の観測で4天体を観測することが出来た。現在詳細なデータ解析を行っているところである。いずれの天体においても、複雑な速度構造を検出できている。今後、輝線プロファイルのフィットを行い、各速度コンポーネント毎の輝線スペクトルを得て、モデルとの詳細な比較を行いたい。
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