本研究は、主に広域サーベイ観測を目的する広視野軟X線望遠鏡を、「多層膜スーパーミラー」と「Wolter II型光学系」により実現しようとするものである。この目的のため平成13年度においては、多層膜スーパーミラーの基本設計及び試作、光学系の基本設計を行った。 多層膜スーパーミラーの設計においては、従来より研究を行ってきた白金(Pt)/炭素(C)多層膜スーパーミラーについて、2keV以下の軟X線領域で従来のX線望遠鏡よりも大角度の入射角を持つWolter II型光学系を想定して設計を行った。その結果、入射角5〜15度の反射鏡に対して、エネルギー帯域幅0.5keV(@1.3keV)などのスーパーミラー設計を得、1.7度の有効視野を得られることがわかった。次に反射率の観点から、Pt/Cに加えてNi/C、Cr/C、Mo/Siなどの多層膜についてイオンビームスパッタ装置により試作を行った。多層膜の実用化においては、理論反射率の高さと共に実際に、製膜した結果得られる反射率の理論値に対する比が重要である。Ni/Cについては、Pt/Cに比べ理論値、実測値共に高く、軟X線領域での利用が現実的であることを確認することができた。 次に光学系設計においては、多層膜スーパーミラーとともに従来の単層膜反射鏡の利用も想定して研究を行った。小型、広視野、短焦点、高開口効率、などの要求から、(1)多段反射型多重薄板光学系、(2)広視野Wolter II型光学系、について具体的な設計を行い、例えば「あすか」搭載X線望遠鏡と同等の性能を、約1/3程度の焦点距離で実現できることを示した。(1)と(2)の光学系は、結像性能及びエネルギー領域の観点から互いに相補的な性能を持つ。これらの知見に基づき、宇宙研が計画中の小型衛星MV-Liteへの提案を行った。
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