大型望遠鏡では光学系が姿勢変化などで変形するため、鏡を多数のアクチュエータで支持、形状の補正を行うことが一般的になりつつある。しかし鏡の裏面から多数の点で押し引きする手法は多くのアクチュエータが必要となり、コストが高くなるだけでなく、故障に対する信頼性が低い。低コスト化や宇宙望遠鏡を考えると、実際に補正が必要なモード数程度の本数のアクチュエータで能動支持を実現することが必要である。そこで本研究では、鏡の端にモーメントを与えることで低次の変形モードを生じさせ、少ないアクチュエータで鏡の低次モードだけを補正する方式の可変形鏡を開発している。 本研究は2年計画で遂行されており、1年目の今年度は可変形鏡のモデルを作り、その性能と仕様を計算で求めた。計算に用いたモデルは10cmの平面鏡で120度対称の3点の2自由度を拘束したマウントを仮定、これらの支持点に対して位相を60度ずらした3つ位置から45ミリのビームを下向きに付けて端点を押し引きすることでモーメントをかける。このモデルでは3つの自由度があり、力の組み合わせで光学収差のZernikeモードにおけるA22、B22とA33を生じることができるものである。 有限要素法を用いた設計により、アクチュエータの変形量は鏡面の変形の10倍程度必要であること、力は既成品のピエゾアクチュエータで十分であることを確認し、試作品のスペックを確定した。また、A22、B22の変形を行うためには補正量に対し約1/10程度、A33については1/3程度の高次収差(意図しない変形)が生じることが判明した。 来年度は以下の研究を進めることとする。1.試作機を製作、干渉計測で実証する2、高次変形が少ない構造の設計、3、MAGNUM、新岡山3.5m望遠鏡などの望遠鏡の副鏡をモデルに実用機を設計する。
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