研究概要 |
私が中心メンバーとなって貢献しているガンマ線バースト探査衛星HETE-2は、年間約20個のペースでガンマ線バースト(GRB)の位置速報をおこなってきた。特に2002年10月4日(GRB021004)と12月11日(GRB021211)に起きたバーストで、それぞれ48秒と22秒というリアルタイムの位置速報を出すことに成功した(Gamma-ray Burst Coordinate Network, http://gcn.gsfc.nasa.gov/gcn/参照)。これにより、今まで誰も調べることのできなかった、バースト発生直後の光学対応天体の振る舞いが、詳細に観測された。その結果、バースト直後における予想外の増光や、きわめて急速に減光する対応天体などが発見され、GRB発生環境の研究に大きなブレークスルーをもたらした。私は広視野X線モニターの運用と解析を通じて、これらの成果を出すのに直接の貢献をした。また、HETE-2がとらえたバーストのエネルギースペクトルを詳細に観測していくなかで、X線領域のみに放射を示す特異なバースト(X線フラッシュ;XRF)が予想以上に多く存在し、全バーストの30%以上を占めていることを示した。XRFがGRBの一種なのかどうかは大きな謎の一つであったが、HETE-2の観測により、エネルギーフラックスのピーク値(Ep)以外の特徴は、GRBに酷似していることがわかった。その結果から、XRFは中心天体からの物質放出速度が遅く、エネルギーの青方偏移をあまり受けていないGRBであると解釈するのが最も自然ではないかという結論が得られた。またGRBのEp分布は、1990年代のBATSE検出器の結果を元に200keV付近に集中していると考えられていて、これが理論モデル構築上の足かせとなっていたが、HETE-2の結果により、Ep分布が200keV付近に集中しているわけではなく、さらに低いエネルギーまで広がっていることがはっきりと示された。
|