高精度アストロメトリの観測が始まろうとするこの時機、重力レンズにおける新しい展開を考えることは非常に重要です。最近の大きな話題である系外惑星の探査に関係する「位置天文的マイクロ重力レンズ」を考察しました。何故なら、ドップラー法とよばれる系外惑星探査のこれまでの標準的な手法では、地球のような長軌道の惑星を発見する事は非常に困難です。一方、重力レンズの典型的なスケールであるアインシュタイン・リングの大きさは地球軌道程度になることが知られており、重力レンズを用いた方法が期待されています。 具体的には、主星が惑星を伴っている場合の重力レンズの基礎方程式は高次の連立方程式になるので、これまで数値計算でしか扱えませんでした。特に、特異なポテンシャルなので、数値的に安定に解を求める事が容易ではありませんでした。本研究により、世界ではじめて、摂動法により「解析的な公式」を発見しました。これを用いると、重力レンズによる像の明るさの変化や位置の揺らぎを解析的に評価する事ができます。今後、惑星の大きさ・運動などの効果も取り入れた定量的評価を行ない、将来の観測への示唆を与えたい。 また、2体だけでなく、多体への拡張を行なえば、高精度アストロメトリ観測を用いた銀河内の「コンパクトなダークマター」検出も議論可能になるであろう。これも、次年度以降の課題です。
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