研究概要 |
1.拡張重力理論における原始ブラックホールの進化 素粒子相互作用の統一理論においては、重力を他の相互作用と統一するためにアインシュタイン理論の拡張(修正)が要請される。拡張された重力理論では一般に、宇宙膨張の効果で重力定数が変化するが、その中でブラックホールがどのように進化するかは興味深い問題であった。この問題について,一様等方な膨張宇宙の中にブラックホールを含む真空領域を埋め込む解を構成し,ブラックホールの質量・サイズが宇宙膨張と共に変化することを示した。 2.数値相対論の宇宙論的応用 アインシュタイン方程式をコンピュータで解く方法論、いわゆる数値的相対論は、連星系を対象とする重力波研究においては長年の研究により確立しつつある。一方、宇宙全体の大域的時空の進化を考える場合には,重力波研究のように漸近的平坦として扱うことができないため,これまでの方法をそのまま適用することができない。そこで,適切な初期条件・境界条件・座標条件を探求する必要がある。平成13年度は,座標条件や積分方法について解析的な検討を行い,数値解析のアルゴリズムを数通り作成した。次年度は実際にプログラミングを行って比較し,最適な計算法により,原始ブラックホール形成や宇宙の相転移のダイナミクスを研究する。 3.一般相対論的電磁気学の定式化とパルサー磁気圏における粒子加速 初期宇宙や高密度天体においては,強重力場の中で電磁気学現象が起こる。Landau-Lifshitz及びThorne-Macdonaldは,4次元テンソルで書かれた一般相対論的電磁場の方程式を,3+1(ベクトル・スカラー)形式に書き下したが,実際に使う上でそれぞれに欠点があることから,この3+1形式を再構築した。そして,パルサー磁気圏の粒子加速問題に適用し,粒子加速に対する重力の効果を定量的に明らかにすると共に,私の再構築した3+1形式が実際に役に立つことを示した。
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