カイラルなゲージ理論の格子上での定式化に関する研究

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13740142
• 研究機関: 茨城大学
• 研究代表者: 鈴木 博 茨城大学, 理学部, 助教授 (90250977)
• キーワード: 格子ゲージ理論 / カイラル対称性 / カイラルフェルミオン / アノマリー

研究概要

格子上の新しいカイラル対称性の取り扱い方法の理解とその応用に対して、今年度は6編の論文を発表した。内容としては、(i)ゲージ群がU(1)の格子ゲージ理論におけるトポロジカル電荷を、一般の次元に対して構成し、その意味を議論した。(ii)超場形式で定式化された超対称ゲージ理論におけるゲージアノマリーを、一般のホモトピー経路に対して計算する簡明な処方箋を与え、いくつかの例に対して適用した。(iii)一般化されたGinsparg-Wilosn(GW)関係式を満たす格子上のディラック演算子に対して、荷電共役が自然に定義し得ないことを指摘し、その意味を議論した。また、GW関係式を満たすディラック演算子を使って定式化されるカイラルな格子ゲージ理論において、定式化において不可避なCP対称性の破れが引き起こす効果を明らかにした。(iv)GW関係式を満たすディラック演算子から定義される格子上の軸性アノマリーの基本的構造を、有限の格子間隔、有限の体積の場合について明らかにした。(v)Overlapディラック演算子から定義される格子上の軸性アノマリーの古典連続極限を、任意の次元に対して計算した。(vi)ゲージ場が空間依存性を持たないいわゆるreduced modelに通常の格子ゲージ理論を"埋め込む"ことによって、reduced modelにもアノマリーの名残があることを初めて指摘した。(vii)GW関係式と密接な関係がある、格子上のカイラルフェルミオンのもう一つの定式化であるdomain wall fermionの問題点を指摘し、この定式化においても、CP対称性の破れが不可避であることを示した、である。

研究成果

• [文献書誌] 藤川和男, 石橋真人, 鈴木博: "Ginsparg-Wilson operators and a no go theorem"Physics Letters B. 538. 197-201 (2002)
• [文献書誌] 藤川和男, 石橋真人, 鈴木博: "CP breaking in lattice chiral gauge theories"Journal of High Energy Physics. 0204. 046 (2002)
• [文献書誌] 五十嵐浩, 奥山清, 鈴木博: "More about the axial anomaly on the lattice"Nuclear Physics B. 644. 383-394 (2002)
• [文献書誌] 藤原高徳, 永尾敬一, 鈴木博: "Axial anomaly with the overlap-Dirac operator in arbitrary dimensions"Journal of High Energy Physics. 0209. 025 (2002)
• [文献書誌] 菊川芳夫, 鈴木博: "Chiral anomalies in the reduced model"Journal of High Energy Physics. 0209. 032 (2002)
• [文献書誌] 藤川和男, 鈴木博: "Domain wall fermion and CP symmetry breaking"Physical Review D. 67. 034506 (2003)