研究概要 |
本科学研究費補助金は、太陽質量の10^6倍程度の質量を持ついわゆる超巨大星が重力崩壊し、超巨大ブラックホールを形成する過程を調べるために交付された。今年度は特に、回転する超巨大星が、軸対称重力崩壊する場合にブラックホールが形成するのかどうかについて、完全に一般相対論的な数値計算を用いて調べた。具体的には、現実的な初期条件として、ケプラー速度で剛体回転する不安定な超巨大星を与え、シミュレーションを実行した。その結果、 (1)ブラックホールは形成する、 (2)初期の超巨大星の質量の約90パーセントがブラックホールに吸い込まれる、 (3)初期の無次元スピンパラメータ(q=cJ/GM^2 ; ただし、c, J, G, Mは光速度、角運動量、重力定数、質量)はおよそ1であるが、形成するブラックホールではq=0.75程度になる、 (4)大きな角運動量を持っていた流体素片は、ディスクを形成する、 などの結果が得られた。これらの結果をまとめ論文を作成し、現在投稿中である。さらに重力崩壊において発生する重力波に関する解析も、現在進行中である。またポストニュートンシミュレーションも行ない、重力崩壊が軸対称で進むとする仮定の正当性に関しても確認した。 それ以外にも周辺分野の研究を行い、以下のような話題に関する論文を数編発表した。 (1)連星中性子星の合体の完全に一般相対論的シミュレーション、 (2)合体に向かう連星中性子星からの準周期的重力波の相対論的解析、 (3)ブラックホールと中性子星からなる系の熱力学。
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