本課題で鍵となるのは、チェレンコフ望遠鏡複数台を用いたステレオ観測によるマッピングである。平成13年度は、オーストラリアに設置されるこの複数望遠鏡計画の2台目の建設準備に携わった。1台目の建設・運用の経験からデザインや作業工程の改善を行い、より効率良い建設作業を実現した。例えば集光装置を構成する小型鏡は、遠隔で姿勢が調整できるシステムである。今回、線形性・再現性を精度良く測定し、デザインを改善した。今後は望遠鏡複数台のコントロール等を調整し、14年度からステレオ観測が始まる予定である。 現在稼働中の1号機望遠鏡で観測を行い、データを解析した。チェレンコフ望遠鏡では入射宇宙線/ガンマ線が大気中で作るチェレンコフ光をPMTピクセルのカメラで捉えるが、これらシャワー事象に対して夜光や星光などのランダムな背景雑音が大量にデータに混入してしまう。解析データの対象は銀河近くのX線連星系PSRB1259-63。星が密集する背景雑音のスタディとしても有用であり、銀河円盤の観測に応用できる。電波パルサーが主系列Be星と極端に偏った楕円軌道を形成しているこの連星系は、Be星のディスク/星風とパルサー風の相互作用を直接に調べるプローブとして、独特な意義を持っている。近星点後の観測結果、高エネルギーγ線の放射は上限値であった。結果は物理学会で発表され、雑誌論文として準備中である。
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