1.米国のブルックヘブン国立研究所で行われた実験で、ミュー粒子の異常磁気能率(gμ-2)の測定値が標準模型の予言よりも2.6σ大きいという報告を受け、これを超対称標準模型の枠内で理解する事を試みた。関与する超対称粒子の質量に対して、実験データから得られる上限値、下限値を求めた。また、LEPやSLCにおける電弱精密測定実験データから得られる、超対称標準模型のパラメータ空間に対する制限を求めたところ、(gμ-2)の実験データを説明できるような超対称標準模型のパラメータ空間では、精密測定実験データに対するフィットが他の領域に比べて良くなると言うことを指摘した。 2.超対称模型における、フレーバーを変える中性カレント(FCNC)やCP非対称性の問題などを解決するアイデアの一つとして提案されているdecoupling solutionという模型に基づいて(gμ-2)及びレプトン・フレーバーを破る過程との相関を調べた。現在得られている、τ→μγの分岐比に対する上限値を満たしながら同時に(gμ-2)の実験データを説明できるパラメータ領域が存在する事を指摘した。 3.Arkani-Hamedらによって提唱された"deconstruction"のアイデアを応用し、現在の4次元時空が漸近的に3次元時空と一つの離散化された空間次元からなるという可能性に対する現象論的制限を調べた。最も簡単な例としてQEDを考え、その有効ラグランジアンからe^+e^-→γγ過程の散乱断面積を求めた。LEP2で与えられている実験データと比較したところ、離散化された空間次元の格子間隔αに対して1/α>460GeVという制限を得た。また電子・陽電子リニア・コライダー実験において期待される、αに対する制限を調べた。
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