1)米国フェルミ加速器研究所のテバトロン実験におけるbクォーク生成断面積のデータが標準模型の予言とは異なるという結果に対して、超対称性模型で予言されるグルイーノとスカラー・ボトムクォークが約10GeV程度の軽い質量をもつためだという解釈がなされてきたが、そのような軽い超対称粒子が存在した場合、Zボソンのフェルミオン2体崩壊過程に大きな輻射補正を与えるという事を示し、LEP実験のデータからこのような解釈は強く否定されるという事を示した。 2)超対称標準模型において、ヒッグス粒子は5種類予言され、それらの質量に対してはLEP2実験から数十GeV〜100GeV程度の下限が与えられている。しかしtanβが1より小さい場合、e^+e^-→hZやe^+e^-→hAなどの崩壊モードを調べることは困難で、擬スカラー粒子A^0が20GeV以下であるという可能性を排除できない。本研究ではこのような軽い擬スカラー粒子の存在は電弱精密測定実験の対象となる素粒子反応過程に非常に大きな輻射補正を与え、現存のデータから全く排除されるという事を示した。 3)超対称大統一理論が持つ困難の一つにヒッグス場の2重項・3重項分裂問題がある。この問題に対するアプローチの一つとして特殊な離散対称性や余次元時空に素粒子が伝播する事によって3重項であるカラード・ヒッグスの質量がTeVスケール程度になる、というものがある。このようなカラード・ヒッグスの、ハドロン・コライダーにおける生成可能性を調べ、またテバトロンやLHCなどの今後のエネルギーフロンティア実験における探索可能性について示した。
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