研究概要 |
1.研究代表者が考案した「スクイーズ状態を用いた時間依存変分法」を、0(4)線形シグマ模型に適用することによって、カイラル相転移の時間発展を記述する試みを行った。異方カイラル凝縮体(DCC)の生成過程では、平均場としてのカイラル凝縮体が、量子揺らぎとしての量子メソン場の中でそれらと相互作用しながら時間発展をしていくと考えられるが、スクイーズ状態の導入によりこの物理的状況が記述できることを示した。その上で、カイラル凝縮体と量子メソン場の振幅の両方の時間発展を自己無撞着に解くことにより、カイラル凝縮体が真空値に緩和していく際にはカイラル凝縮体に蓄えられていたエネルギーは量子メソン場に流れていくこと、そのために量子メソン場の導入が重要であることを、量子メソン場のモード数を変えて数値計算することによって明らかにした。この内容は学術論文としてすでに公表された。同時に、カイラル凝縮体が真空値に緩和する際には、量子メソン場、特に低運動量を持つパイオンの振幅が増幅されることを示した。この現象は、カイラル相転移の際には低運動量のパイオンが放出されることを意味する。動的カイラル相転移の際にはカイラル凝縮体の真空値のまわりの振動に起因したパラメータ共鳴が生じることを意味しているが、それだけでは説明できない量子メソン場の振幅の増幅が存在することが見られている。この現象についてはその詳細を検討中である。 2.1.で用いたスクイーズ状態はコヒーレント状態の一種の拡張であるが、別の拡張の方法として、量子群に現れる従来の量子変形を含むコヒーレント状態の拡張について検討し,これを学術論文として公表した。ある種の異なる揺らぎを含む可能性があり、動的カイラル相転移の変分試行状態として採用され得るか、検討中である。
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