研究概要 |
今年度は、(1)He-Neレーザーを用いた可視光領域での二光子相関実験、(2)希土類金属の内殻励起軟X線発光分光測定を行った。本研究の最終的な目標は、非線型発光分光から放射光の二次空間コヒーレンスを評価する実験手法を確立することにあるが、(1),(2)はその予備的実験である。 (1)He-Neレーザーを回転する擦りガラスに通すことで擬似カオス光を生成し、一次および二次空間コヒーレンスの測定を行った。一次空間コヒーレンスの測定は、100μm〜1000μm間隔の二重スリットを備えたヤング型干渉計を構築することで行った。また、二次空間コヒーレンスの測定は、二台の光電子増倍管からの信号の相間をTAC(Time to Amplitude Converter)で測定することによって行った。光が完全な擬似カオス光であるには、一次と二次の空間コヒーレンスに簡単な関係が成り立つが、実験結果はそれを満足していないことがわかった。これは、一次と二次のコヒーレンス測定では、光を観測する時定数が異なる(一次では秒、二次ではマイクロ秒程度)ためであると考えられる。この実験結果は、将来加速器内の電子ビーム状態の観測にを2次コヒーレンス測定を使う場合、きわめて短い時定数で観測できることを示唆している。また、この研究の付加的な成果として、TACによって得られる光子の相関関数の計算にクラスター展開を適用することで、定量的に二次コヒーレンスを評価できることを発見した。 (2)軟X線の二光子吸収過程を観測するためには、二光子吸収後にできた内殻正孔に電子が遷移して放たれる蛍光を観測すればよい。その予備実験として、希土類金属(Gd, Tb, Dy, Ho)の4d内殻電子による一光子吸収後の蛍光測定を行った。これらの金属では、現在の放射光強度で十分に強い蛍光が得られることがわかった。
|