研究概要 |
本研究では平成11(1999)年開始されたK2K実験におけるKEK内に設置された前置ファイバー検出器により観測されたニュートリノ反応データを用い、ニュートリノ反応の断面積、特に中性カレント反応の反応断面積を10%精度で測定することを目的とする。本年度の研究成果は以下のとおり。 (1)平成11年11月から13年(2001年)7月までのデータを解析して、ファイバー検出器内部でニュートリノが反応した事象約22,500事象、そのうち後方ミューオン飛程検出器まで到達した荷電カレント事象が約8,300事象を選択することに成功した。 (2)このデータのうち、まず2体反応であり、断面積の比較的よくわかっている荷電準弾性散乱反応事象を主にトラック数(1本か2本)により選択し、入射したニュートリノのフラックスの再構成を試みた。この際トラック数分布の理解にはニュートリノにより散乱された陽子が核内反応で再び散乱する効果が重要であることをつきとめ、この効果を取り入れたモンテカルロシミュレーションの結果、入射ニュートリノフラックスを1GeV以上の領域で系統誤差を含み10%程度でおさえられることを示した。 (3)中性カレント弾性反応による陽子選択のため、後方ミューオン飛程検出器まで到達していない(ミューオンではない)、1トラック事象約1,000事象を選択した。プレリミナリーな解析ではこのうち約15%がファイバー検出器内部やその直下にあるトリガーカウンターで大きなエネルギーロスをおこしている陽子トラックの候補であることが示された。 (4)(1),(2)の成果について、平成13年春日本物理学会(中央大学)および12月本機構で開催された国際研究集会(NuInt01)において発表を行った。
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