研究概要 |
偏光特性に優れた光ファイバプローブを使用し,高感度かつ安定な偏光検出型の近接場光学顕微鏡を開発することにより,鉄ガーネット薄膜の磁区イメージングや磁気光学記録,微小ピットの読み出しを反射配置(カー回転)にて成功した結果ならびに液晶配向観察に応用した結果を報告する.偏光状態の安定性を考慮し,光ファイバプローブの先鋭化にあたっては,化学エッチング法を用いた.反射配置においては,光の入出力の効率が最終的な偏光検出感度を制限するため,テーパー部の設計を計算機シミュレーションの援用によっで慎重におこなった.先鋭化したファイバに金属膜を蒸着し,先端を観察対象に対して押し当てることにより,良質な開口を作製した.なお,光ファイバ全体の長さは,偏光の安定性のため,80mmと極力短くし,端面反射を空間的に分離するため,斜め研磨をおこなった.観察用の光源としては,主にヘリウムネオンレーザ使用し,偏光回転の検出方法にはいくつかの方法を試行した.クロスニコル法,偏光変調法,バランス検出法などを試み,それぞれに一長一短を確認した.クロスニコル法においては,5桁の消光を達成したが,検出感度の点では,他の二者がより優れている.系全体の偏光の安定性を更に向上させ,バランス検出法を用いる方向で今後は装置の改善を進める.具体的な装置評価にあたっては,磁区の幅が350nmの鉄ガーネット薄膜と光磁気記録媒体の観察をおこなった.十分な信号検出感度を確保するためには,開口径として200nm程度の開口を必要とし,分解能としてもその程度の値にとどまった.また今回開発した測定システムの応用として,近接場領域における偏光解消効果を利用したイメージングもおこなった.レジスト膜にて作製された100nmのピット(窪み)を高感度かつ50nm程度の分解能にて観察することに成功した.また配向膜近傍の液晶分子のダイナミクス観察にも応用し,膜面の不均一性が液晶配向に与える影響について議論した.
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