研究概要 |
一次元強相関電子系において巨大非線形光学応答が観測されて以来(Kishida et al., Nature 405929(2000))、様々な一次元強相関電子系物質について非線形光学応答の観測がなされてきた。しかし、その起源にせまり、非線形光学材料設計の指針を得るためには、非線形光学応答に対する次元性の意味を明らかにすることが重要である。今年度は、二次元系における非線形光学応答を明らかにすることに注力し研究を行った。 2種類の二次元銅酸化物La_2Cu0_4及びNd_2Cu0_4について第三高調波発生法(THG法)を用いて非線形感受率スペクトルを測定した。非線形感受率の値は、10^<-10>esu程度であり、一次元系と比べ約一桁小さいことが明らかになった。測定した絶対値スペクトルでは、励起準位構造が明確ではなかったために、(複素)非線形感受率の位相を測定した。これにより、この非線形感受率は電荷移動ギャップに対する3光子共鳴過程と2光子共鳴過程の相乗効果により発生していることが明らかになった。 二光子共鳴する準位が非線形光学過程に重要な寄与を果たすことが明らかになったが、その詳しい準位の位置は上記の実験からだけでははっきりしない。そこで二光子吸収スペクトルの測定が必要になる。定量的な二光子吸収スペクトルを得るために、従来から非線形感受率の実部の定量測定法として確立されているZ-scan法を応用し、二光子吸収スペクトルの測定を行う予定である。
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